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戦略を練るだけでは十分ではない──『資治通鑑』が教える「人を読む力」の重要性

経営 約4分で読めます

業が計画どおりに進まない理由は、数字では説明できないことがある

事業計画を立てるとき、私たちは市場分析や競合調査、売上予測、コスト、投資対効果など、多くの情報をもとに意思決定を行います。

しかし、十分な準備を重ねたにもかかわらず、想定どおりに進まないプロジェクトは少なくありません。

その背景には、市場環境の変化だけでなく、「人」の意思決定という、数値化しにくい要素が影響しているケースもあるのではないでしょうか。

私は、この視点こそ経営や組織運営において見落とされやすい重要な論点だと考えています。


価値は「時間」ではなく、「課題解決」から生まれる

ビジネスの世界では、「時間を提供すること」そのものよりも、「相手の課題を解決すること」が継続的な価値につながると言われます。

さらに、その課題解決の出発点は、「自分が提供したいもの」ではなく、「相手が本当に必要としていること」を理解することです。

これは営業でも、システム開発でも、医療でも、組織マネジメントでも共通する考え方ではないでしょうか。

一方で、どれだけ課題分析を行っても、見落としやすい要素があります。

それが「人」です。


「事」は分析できても、「人」は想定どおりには動かない

例えば、数か月かけて提案書を作成したとします。

データを分析し、予算を積み上げ、想定質問も準備し、競合の動きも予測する。

会議も順調に進み、「計画どおりだ」と感じたその瞬間、意思決定者がこう告げます。

「今回は、このプロジェクト自体を見送ります。」

データを否定されたわけでも、提案内容を論破されたわけでもありません。

それでも、前提としていたシナリオは大きく変わります。

このような場面では、「分析が足りなかった」というよりも、「意思決定には合理性だけでは説明できない要素がある」ことを改めて認識させられます。

人は立場や責任、組織の状況、タイミング、感情、将来への見通しなど、多様な要因を踏まえて判断します。

だからこそ、経営では「事実を分析する力」と同じくらい、「人を理解する力」が重要になるのではないでしょうか。


『資治通鑑』に学ぶ「相手の心理を読む」視点

このテーマを考えるうえで印象的なのが、『資治通鑑』に記された孟達と司馬懿の逸話です。

孟達は、朝廷への報告手順や移動日数などを計算し、「十分な準備期間がある」と判断しました。

一方、司馬懿は、その前提そのものを崩す行動を選びます。

朝廷の正式な判断を待たずに軍を動かし、同時に孟達には安心させる内容の書簡を送りました。

歴史的な評価や細部の解釈にはさまざまな見方がありますが、この逸話が示しているのは、「相手の計画」だけではなく、「相手がどう考え、どう行動するか」を読む重要性だと言えるでしょう。


司馬懿と諸葛亮、二つの異なる戦略

同じ時代、諸葛亮は国力差を十分理解したうえで北伐を決断しました。

戦術的には厳しい挑戦だったという見方もあります。

それでも前進した背景には、「勝てるかどうか」だけではなく、「果たすべき使命」という価値観があったと語られています。

司馬懿は相手の心理を読み、諸葛亮は自らの信念を貫いた。

両者の判断は対照的ですが、どちらも「人間とは何か」を深く理解しようとした点に共通項があるように感じます。


AI時代だからこそ、人間理解の価値は高まる

生成AIの進化によって、市場分析や情報整理、シミュレーションの精度と速度は大きく向上しています。

一方で、最終的な経営判断には、信頼関係、組織文化、価値観、心理的安全性といった、定量化が難しい要素も依然として大きな影響を与えています。

そのため、AIを活用できる時代だからこそ、人間を理解し、多様な利害関係者との合意形成を進める力は、これまで以上に重要になる可能性があります。


SMHCが目指す価値創造

SMHCは、「AI × IT × 医療」を軸に、単なるシステム開発や人材提供ではなく、お客様の課題解決まで伴走する価値創造型の事業を目指しています。

私たちが推進するFDE(課題発見から実装・改善までを支援するアプローチ)でも、技術だけでは十分とは考えていません。

現場で何が起きているのか。

誰が意思決定を行うのか。

組織は何に不安を感じ、どのような未来を目指しているのか。

そうした背景まで理解して初めて、技術は本当の価値を生み出せると考えています。


おわりに

歴史は繰り返されるわけではありません。

しかし、人が意思決定をするときに直面する葛藤や利害、責任、信念には、時代を超えて共通する部分があります。

だからこそ、私たちは「事業を設計する力」だけでなく、「人を理解する力」も磨き続ける必要があるのではないでしょうか。

皆さんの組織では、意思決定を支えるために、「数字」と「人」の両方を十分に見つめる仕組みができているでしょうか。

この記事は2026年7月8日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする

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