李鉉道SMHC株式会社 代表取締役

目次
経営をしていると、日々さまざまな意思決定を迫られます。
新規事業へ投資するか。 採用を強化するか。 AIへ投資するか。 既存事業を続けるか、それとも撤退するか。
キャリアにおいても同じです。
転職するか、この会社で成長するか。 目先の収入を優先するか、中長期的な価値を積み上げるか。
こうした判断に「絶対の正解」はありません。しかし、経済学の考え方は、より合理的に意思決定するための有効な視点を与えてくれます。
経済学は、お金だけを扱う学問ではなく、「限られた資源をどのように配分するか」を考える思考法でもあります。時間、人材、資金、信用、そして集中力も、経営における重要な資源です。
① 機会費用──「選ばなかった価値」を意識する
何かを選ぶということは、別の可能性を手放すことでもあります。
仕事も同様です。
収入だけではなく、
・社会へどのような価値を提供できるのか ・自分自身が成長できるのか ・長期的に取り組む意味があるのか
こうした視点まで含めて考えることで、機会費用を踏まえた意思決定に近づけます。
② サンクコスト──過去ではなく未来で判断する
すでに投じた時間や費用、労力は戻りません。
だからこそ、
「ここまで投資したから続ける」
ではなく、
「これから価値を生み出せるか」
という視点が重要になります。
これは事業投資、人材配置、プロジェクト継続の判断にも共通する考え方です。
③ 限界効用逓減──「好き」と「続けられる」は違う
一般に、同じものを繰り返し得ると、新たに得られる満足感は徐々に小さくなる傾向があるとされています。
だからこそ、
「好きだから始める」
だけではなく、
「長く価値を生み出せるほど取り組めるか」
という視点も重要になります。
キャリアや事業では、短期的な興味だけではなく、継続的な探究心や使命感が支えになる場面も少なくありません。
④ 限界費用──頑張ることと、成果は比例しない
一定までは努力が成果につながります。
しかし、ある段階を超えると、
追加の労力に対して得られる成果は小さくなる場合があります。
例えば、
売上をさらに伸ばそうとして、
採用 管理 品質管理
などのコストが急激に増えるケースは珍しくありません。
重要なのは、
追加で投入する資源が、それに見合う価値を生み出しているかを継続的に見直すことです。
これは冒頭の問いにもつながります。
「より高い収入」を目指すこと自体が問題なのではなく、そのために必要なコストやリスク、持続可能性まで含めて判断することが重要ではないでしょうか。
⑤ 比較優位──すべてを自社でやる必要はない
企業経営では、
「できること」
と
「自社が最も価値を発揮できること」
は必ずしも一致しません。
AI、営業、採用、医療DXなども、
外部パートナーとの協業によって、より高い成果が得られるケースがあります。
重要なのは、
誰が担当するかではなく、
誰が最も高い価値を生み出せるかという視点です。
⑥ 価値と価格──市場評価は情報でもある
価格と本質的な価値は必ずしも一致しません。
市場には情報の非対称性が存在するため、評価は期待や将来性によって変化することがあります。
企業にとっては、
業績が安定している時期にこそ、
採用 資本政策 パートナーシップ ブランド投資
などを進めることで、中長期的な選択肢を広げられる可能性があります。
⑦ 選択のパラドックス──選択肢が多いほど迷いやすい
一般に、選択肢が増えると比較に時間がかかり、意思決定が難しくなることがあります。
経営でも、
「あれもやる」
「これもやる」
を続けるほど、
組織の集中力は分散しやすくなります。
だからこそ、
「やらないこと」を決めることも重要な経営判断です。
⑧ 経路依存──最初の選択は未来を形づくる
最初に選んだ仕事や事業モデル、組織文化は、その後の意思決定に大きな影響を与えることがあります。
もちろん、後から方向転換することは可能です。
一方で、時間が経つほど変更コストが高まる場合もあるため、初期の選択を丁寧に考えることには大きな意味があります。
⑨ 価格シグナル──難しい仕事ほど価値が生まれやすい
市場では、
需要が高く、供給が少ない分野ほど高い評価につながる傾向があります。
もちろん、すべての高価格が高付加価値を意味するわけではありません。
しかし、
参入障壁があり、専門性が求められる領域では、中長期的に競争優位につながる可能性があります。
⑩ 囚人のジレンマ──信頼は長期的な競争力になる
短期的な利益だけを見ると、
協力よりも自己利益を優先したくなる場面があります。
しかし、継続的な取引や共同事業では、
信頼関係があることで双方にとって望ましい結果につながるケースも少なくありません。
その意味で、
誠実さは倫理だけではなく、長期的な経営資産とも考えられます。
⑪ 取引コスト──意思決定にもコストがある
商品を購入するときは、
価格だけでなく、
調査 比較 判断 調整
にも時間がかかります。
企業でも同様です。
会議が増えすぎる。
承認フローが複雑になる。
情報共有が属人化する。
こうした見えにくいコストを減らすことも、生産性向上には欠かせません。
⑫ 保有効果──関与が価値を高める
行動経済学では、自分が保有しているものを実際以上に高く評価する傾向が知られています。
この考え方は、
プロダクト開発 顧客体験 採用 組織づくり
にも応用されています。
社員が組織づくりに参加する。
顧客がサービス改善に関わる。
こうした「関与」の設計が、エンゲージメント向上につながる可能性があります。
SMHCが考える「価値創造」と経済学
SMHCは、「AI × IT × 医療」を軸に、単なる人月提供ではなく、お客様の課題解決まで伴走する価値創造型の事業を目指しています。
そのために必要なのは、最新技術だけではありません。
限られた経営資源をどこへ配分するか。 どこで比較優位を築くか。 どの領域へ集中し、何を手放すか。
こうした意思決定の積み重ねが、企業の競争力を左右すると考えています。
AIが急速に進化する時代だからこそ、技術そのもの以上に、「何を選び、何を実装するか」を見極める力が重要になっています。
経済学の原理は万能な答えではありません。しかし、意思決定の質を高めるための有力な視点の一つになるのではないでしょうか。
皆さんの組織では、限られた時間・人材・資金を、本当に価値を生み出す領域へ配分できているでしょうか。
この記事は2026年7月9日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする
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