李鉉道SMHC株式会社 代表取締役

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【海外AIレポート】上海で資産2億円でも「中産階級」?——SNSがつくる“お金持ちの錯覚”
「上海では、資産1,000万元くらいでは金持ちとは言えない。」
中国のSNSを見ていると、時々こんな言葉を目にします。
1,000万元。
日本円にすれば、為替によって変動しますが、おおむね2億円規模です。
それでも上海では「普通の中産階級」。
本当にそうなのでしょうか。
調べてみると、SNSで見える世界と、統計から見える世界には、かなり大きな差がありました。
上海には「資産1,000万元以上」が25.8万世帯
胡潤研究院と東亜銀行が発表した《2025東亜銀行・胡潤財富報告》によると、中国で総資産1,000万元以上を持つ「高純資産世帯」は約200.5万世帯。
そのうち上海は、
約25.8万世帯。
北京に次ぐ中国トップクラスの富裕層都市です。
つまり上海に富裕層が多いこと自体は間違いありません。
しかし、
「上海では1,000万元くらい普通」
という印象とは、少し違う景色が見えてきます。
「周りにたくさんいる」と「社会全体にたくさんいる」は違う
上海の人口は2025年末時点で約2,485万人。
確かに、上海のような巨大都市では、起業家、経営者、金融関係者、外資系企業の幹部、高所得専門職などに接する機会も多い。
さらにSNSを開けば、
「年収100万元」 「資産1,000万元」 「タワーマンション」 「高級車」 「海外旅行」
といった生活が次々に流れてきます。
すると人間の感覚は簡単に変わります。
「これくらいが普通なのではないか?」
と。
しかし、これは統計上の「普通」とはまったく別の話です。
SNSは「平均的な人」を映していない
ここが今回、私が最も面白いと思ったポイントです。
SNSは社会の縮図ではありません。
むしろ、
「目立つ人が、さらに目立つように設計された世界」
です。
成功した人。 資産を持っている人。 高級車を買った人。 起業して成功した人。 高級マンションに住む人。
こうした投稿ほど注目され、拡散されます。
一方で、
普通に会社へ行き、 普通の家に住み、 普通に貯金し、 普通に家族と暮らしている人は、
ほとんどバズりません。
その結果、
「観測している世界」と「現実の分布」がズレていく。
私はこれを、ある意味で
「SNSによる富のインフレーション」
だと思っています。
ただし、「資産2億円」の意味にも注意が必要
もう一つ重要なポイントがあります。
胡潤研究院がいう「1,000万元資産」は、
銀行口座に現金1,000万元がある、という意味ではありません。
不動産、金融資産、企業・事業資産などを含めた「総資産」です。
上海は不動産価格の高い都市です。
したがって、
「資産1,000万元=自由に使える現金1,000万元」
と理解するのも間違いです。
資産額と、可処分所得。 総資産と、金融資産。 企業価値と、個人の現金。
これらは分けて考える必要があります。
それでも、1,000万元は「普通」ではない
この条件を考慮しても、資産1,000万元以上の世帯が中国全体で約200万世帯という数字を見ると、
「誰でも到達している普通の水準」
とは言いにくいでしょう。
むしろ興味深いのは、
なぜ私たちは、上位層を見続けると、それを「普通」だと感じてしまうのか。
ということです。
上海だけの話ではありません。
東京でも、 シンガポールでも、 ニューヨークでも、 そしてLinkedInでも同じことが起きています。
年収2,000万円の人ばかりフォローしていれば、 年収2,000万円が普通に見える。
ユニコーン企業ばかり見ていれば、 売上100億円でも小さく見える。
AIスタートアップの資金調達ニュースばかり見ていれば、 数十億円の調達が日常に見える。
でも、それは現実ではなく、
「自分が選択した情報空間の平均値」
かもしれません。
経営者にも同じ罠がある
これは個人の資産だけの話ではないと思っています。
経営にも同じことが起きます。
SNSでは、
「売上100億円」 「IPO」 「海外進出」 「AIで10倍成長」 「数十億円調達」
というニュースが毎日のように流れてきます。
それを見続けていると、
「自分の会社はまだまだ小さい」 「もっと急成長しなければならない」
という焦りが生まれる。
もちろん、高い目標を持つことは重要です。
しかし、
他人のハイライトを、自分の経営の基準値にしてはいけない。
見るべきなのは、
売上だけではなく粗利。 企業価値だけではなくキャッシュフロー。 成長率だけではなく継続性。 社員数だけではなく一人当たり生産性。
そして何より、
昨日の自社より、今日の自社が強くなっているか。
だと思います。
「普通」は、誰が決めているのか
上海で資産1,000万元。
約2億円規模の資産を持っていても、
SNSの世界では 「まだ中産階級」と言われることがあります。
しかし統計を見ると、その景色は変わります。
だから私は最近、SNSで大きな数字を見るたびに、一度立ち止まって考えるようにしています。
「これは本当に社会の平均なのか。それとも、アルゴリズムが見せている平均なのか。」
AI時代になり、私たちが接触する情報量はさらに増えていきます。
だからこそ必要になるのは、
情報をたくさん持つこと以上に、
自分が見ている世界が、現実のどの部分なのかを理解する力
なのかもしれません。
皆さんはどう思いますか?
「お金持ち」の基準は、資産いくらからでしょうか。
そして、その基準は本当に自分で決めたものでしょうか。
それとも、SNSによっていつの間にか引き上げられたものでしょうか。
参考資料
・《2025東亜銀行・胡潤財富報告》胡潤研究院/東亜銀行 ・上海市統計局「2025年上海市国民経済・社会発展統計公報」
※「約2億円」は概算表現であり、人民元・円の為替レートにより変動します。また、胡潤研究院の「1,000万元資産」は総資産ベースであり、現金・金融資産のみを意味するものではありません。
この記事は2026年9月13日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする
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