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GUCCIが値下げした。高級ブランドの「値上げ成長」が終わる。

経営 約5分で読めます

GUCCIが値下げした。本当に怖いのは「40%OFF」ではない。

「高級ブランドは値下げしない。」

そんな常識が、少しずつ崩れ始めています。

2026年9月、中国でGUCCIが一部商品の価格を引き下げたことが報じられました。

たとえば2026年春夏のMercatoスモールトート。

25,500元 → 20,000元。

約22%の値下げです。

OphidiaやGG Marmontの一部バッグ、さらにドレスやカーディガンなどの衣料品でも価格調整が確認されています。

GUCCI側も、中国メディアの取材に対して、

「市場の総合的な要因に応じて、不定期に商品の価格を調整する」

という趣旨の回答をしています。

でも、私が注目しているのは、

「GUCCIが何%値下げしたか」ではありません。

もっと大きな変化です。

「値上げすれば成長できる」というモデルが限界に来ている

McKinseyの分析には、非常に興味深い数字があります。

2019〜2023年のラグジュアリー業界では、

成長の80%以上が価格上昇によって生み出されていました。

つまり、

商品をもっと売る。

新しい顧客をもっと増やす。

というより、

「ブランド力を使って価格を上げる」

ことが、成長を大きく支えていたわけです。

これは非常に強いビジネスモデルです。

ブランドへの憧れが強ければ、

50万円の商品を60万円にしても売れる。

60万円を70万円にしても売れる。

数量がそれほど増えなくても、売上と利益は伸びる。

しかし当然、このモデルには限界があります。

価格が上がり続ければ、いつか消費者はこう考えます。

「その価格を払うほどの価値が、本当にあるのか?」

McKinseyも現在、価格上昇が需要、特に「憧れ層(aspirational consumers)」に悪影響を及ぼし始めていると指摘しています。

ここが今回のニュースで一番重要だと思っています。

GUCCIの問題は、数字にも表れている

親会社Keringの数字を見ると、変化はさらに鮮明です。

2022年の売上高は、

203.5億ユーロ。

2025年には、

146.8億ユーロ。

約3年間で、およそ28%減少しました。

特にGUCCIは2025年、

売上高60億ユーロ。

前年比22%減でした。

Keringは店舗網の再構築にも踏み込んでいます。

2025年にグループ全体で75店舗を純減。

さらに2026年には100店舗の純減を目標に掲げ、上期だけですでに84店舗を削減しました。

つまりこれは、

単なる「セール」の話ではありません。

価格、店舗、商品、ブランド体験そのものを再設計する構造改革

と見るべきでしょう。

ただし、「高級ブランドの終わり」ではない

ここは重要です。

「GUCCIが値下げした」  ↓ 「高級ブランドが売れなくなった」  ↓ 「ラグジュアリー市場は終わる」

という結論は早すぎます。

McKinseyは世界のラグジュアリー市場が2030年までに約7,000億ドルへ拡大し、年平均4〜6%程度で成長すると予測しています。

市場そのものが消えるわけではありません。

むしろ、

「何に対して高いお金を払うのか」が変わっている。

私はそう見ています。

ステータス。

ロゴ。

希少性。

これだけでは以前ほど強くない。

McKinseyの2026年調査でも、米国・中国双方で、購買を動かす要因が「ステータス」から「感情的なつながり」へ移りつつあると指摘されています。

これは高級ブランドだけの問題ではない

ここからが、経営者として最も考えさせられるところです。

この構造は、

IT企業にも、 コンサルティング会社にも、 SaaSにも、 人材会社にも、

かなり似ています。

市場が成長しているときは、

価格を上げるだけでも成長できます。

しかし市場が成熟すると、

「なぜ、この会社なのか?」

「なぜ、この商品なのか?」

「なぜ、この価格なのか?」

を顧客から問われ始める。

そこで初めて、

本当のブランド力が試される。

高価格であることと、 高付加価値であることは、

同じではありません。

これは私自身、会社経営をしながら常に意識していることでもあります。

AI時代には、この問いがさらに厳しくなる

AIによって、

ソフトウェアも、 コンテンツも、 コンサルティングも、 開発も、

供給コストが急速に下がっていきます。

すると企業はますます、

「作れること」ではなく、

「顧客にどんな価値を生み出したか」

で評価されるようになるでしょう。

GUCCIの値下げから見えてくるのは、

単なるラグジュアリー業界の不振ではありません。

私はむしろ、

「価格を上げれば成長できる時代」から、 「価値を証明しなければ価格を維持できない時代」への転換

なのではないかと思っています。

そしてこれは、すべての経営者に突きつけられる問いでもあります。

あなたの会社の商品・サービスは、もし明日20%値上げしても、顧客から選ばれ続けるでしょうか?

もし答えが「NO」なら——

問題は価格ではなく、

価値の設計そのものなのかもしれません。


【参考資料】

・Kering「2025 Annual Results」 ・Kering「2026 First Half Results」 ・McKinsey & Company「The State of Luxury 2025」 ・McKinsey & Company「The State of Luxury: What US and Chinese clients reveal about the sector’s future」 ・界面新聞「古驰悄悄降价」(2026年9月8日)

※中国メディアで報じられた一部商品の値下げ率には、旧価格・新価格から算出した実際の値下げ率と記事記載の割合が一致しないケースがあるため、本稿では確認可能な価格を基準に記載しています。

この記事は2026年9月15日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする

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