李鉉道SMHC株式会社 代表取締役

面接にアイスコーヒーを持ってきたら、不採用にしますか?
少し面白いニュースを見つけました。
米国で今、「面接にアイスコーヒーを持ってきた候補者をどう評価するか」
という議論が起きています。
きっかけは、ある採用担当者がTikTokで、
「面接でアイスコーヒーを飲むのは、少しカジュアルすぎて、採用にマイナスになる可能性がある」と発信したこと。
動画は46万回以上再生され、議論が広がりました。
「仕事の能力とコーヒーに何の関係があるのか?」
という意見がある一方で、
「コーヒーの問題ではなく、プロ意識の問題だ」
という意見もあります。
CNBCは、この議論を単なるマナー論ではなく、現在の採用市場、世代間の価値観、企業と求職者の力関係を象徴する出来事として取り上げています。
私がこの記事を読んで興味深いと思ったのは、アイスコーヒーそのものではありません。
「私たちは、本当に仕事で活躍する人を見て採用しているのか?」
という問いです。
アメリカと日本では、採用市場の前提が違う
米国では2026年8月の失業率は4.1%。
さらに、失業者の27.0%が27週間以上、つまり半年以上失業状態にあります。長期失業者は約193万人です。
だからこそCNBCの記事では、
「今は企業側に力関係が大きく傾いている」
というキャリア専門家の指摘が紹介されています。
では、日本はどうでしょうか。
日本の最新公表値である2026年7月の完全失業率は2.4%。
有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.10倍です。
一方、正社員有効求人倍率は1.00倍。
つまり日本全体では依然として求人が求職者を上回っていますが、正社員だけを見ると需給はかなり均衡に近づいています。
アメリカのように「企業が圧倒的に選ぶ側」と単純化できる状況でもなければ、
日本も「完全な売り手市場」と言い切れる状況でもありません。
むしろ私は、人材によって採用難易度が大きく分かれる市場になっている
と考えています。
だから、日本企業こそ「何を評価するのか」を決める必要がある
たとえば、
面接にアイスコーヒーを持ってきた。
服装が少しカジュアルだった。
話し方が少しぎこちなかった。
オンライン面接の背景が整っていなかった。
もちろん、顧客対応が必要な仕事であれば、ビジネスマナーも重要です。
しかし、ここで経営者として考えなければならないのは、
「その評価項目は、その人が入社後に成果を出せるかどうかと、本当に関係しているのか?」
ということです。
AIエンジニアを採用するなら、AI技術、問題解決能力、学習力を見る。
PMを採用するなら、顧客との合意形成、プロジェクト推進、リスク管理を見る。
営業なら、顧客理解、提案力、信頼構築を見る。
それよりも先に、
「コーヒーを持っていた」
「なんとなく会社に合わなそう」
という曖昧な印象で判断してしまえば、
採用は簡単に能力評価ではなく、面接官の好みの評価になってしまいます。
「カルチャーフィット」という言葉にも注意したい
採用現場では、
「カルチャーフィットしない」
という言葉をよく使います。
便利な言葉ですが、私は少し危険な言葉でもあると思っています。
なぜなら、
「自分たちと似ている人」
を採用する理由にもなってしまうからです。
私が経営者として重視したいのは、
Culture FitよりValue Fit。
服装や趣味や話し方が同じである必要はありません。
しかし、
顧客に価値を届けようとする姿勢。
約束を守る。
チームで仕事をする。
学び続ける。
プロとして責任を持つ。
こうした会社の価値観については、しっかり確認する。
私は、この二つを分けて考える必要があると思っています。
採用する側にも「選ばれている」という感覚が必要
CNBCの記事でも、面接は企業が候補者を評価するだけでなく、候補者も企業を評価する双方向のプロセスだと指摘されています。
これは日本企業にとって、ますます重要になると思います。
面接官が候補者を見るように、
候補者も、「この会社は人をどう扱うのか」
「何を評価している会社なのか」
「この上司と働きたいと思えるか」
を見ています。
だから採用面接そのものが、
会社の経営思想や組織文化を候補者に伝える場
でもあります。
私自身、採用では次の3つをより大切にしたいと思っています。
表面的な印象より、その人が将来どんな価値を生み出せるかを見る
経験だけでなく、可能性・学習力・キャリアビジョンを見る
企業が候補者を選ぶだけでなく、候補者から選ばれる会社になる
アイスコーヒーを持ってきたかどうか。
それを気にすること自体が悪いとは思いません。
しかし、それを理由に優秀な人材を失うのであれば、
採用側も一度、自分たちに問いかけた方がいい。
「私たちはマナーを採用したいのか。 それとも、未来の成果を生み出す人を採用したいのか。」
AIによってスキルの賞味期限がますます短くなる時代。
採用で見るべきものも、変わっていくはずです。
皆さんなら、
面接にアイスコーヒーを持ってきた候補者を、どう評価しますか?
出典:CNBC, “The iced coffee debate reflects ‘everything wrong with hiring right now,’ says career expert”, Sep. 25, 2026 米国雇用統計:U.S. Bureau of Labor Statistics 日本雇用統計:総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」
この記事は2026年9月27日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする
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