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新卒4700万円は高いのか。Huawei「天才少年」の7年後から考える、人材投資の本質

組織 約7分で読めます

新卒年収4700万円。

この数字だけを見ると、 「さすがHuawei」 「日本企業には真似できない」 と思うかもしれません。

でも、私が本当に興味を持ったのは、金額ではありません。

7年後、その若者たちは何者になったのか。

ここに、AI時代の人材戦略を考えるうえで、非常に重要な示唆があると思っています。


Huaweiが買ったのは「労働力」ではなかった

Huaweiは2019年、「天才少年」と呼ばれる若手高度人材の採用を本格化しました。

当時報じられた年俸は、最上位で182万〜201万元。現在の換算では約4250万〜4690万円に相当します。中位でも約3280万〜3650万円、下位レンジでも約2090万〜2350万円でした。Business Insider Japan

しかも特徴的なのは、単に高い給与を払ったことではありません。

2022年に公表された募集要項では、学歴や出身校を問わず、研究成果、論文、特許、トップレベルの研究室や選抜チームでの経験、国際大会での実績などを重視していました。

採用された人材には、

世界レベルのテーマ 優れた指導者 グローバルなプラットフォームとリソース

を与える、とされています。Business Insider Japan

つまりHuaweiが投資したのは、

「今できる仕事」ではなく、「将来つくり出す価値」

だったのではないでしょうか。


7年後、答えの一部が見え始めた

その「天才少年」たちの一部は、その後Huaweiを離れています。

通常であれば、

「高い給与を払ったのに退職された」 「採用投資を回収できなかった」

と評価されるかもしれません。

しかし、結果は少し違いました。

Business Insider Japanが紹介した調査では、Huaweiを離れ、フィジカルAI領域で企業を創業したり、技術トップとして参画した元「天才少年」は少なくとも9人。

彼らが関与する企業の公表済み資金調達額は、合計約77億元に達するとされています。Business Insider Japan

代表例の一人が、彭志輝氏です。

彼は2020年、最高水準の年俸201万元でHuaweiに入り、AI半導体Ascend関連の仕事に携わりました。

その後2022年にHuaweiを退職し、翌年ロボット企業Agibotを共同創業。

同社は2026年6月までに累計1万5000台のロボットを量産したと報じられています。Business Insider Japan

ここで私は、一つの疑問を持ちました。

彼がHuaweiを辞めたことは、Huaweiにとって本当に「損失」だったのでしょうか。


「人材流出」という考え方は、もう古いのかもしれない

日本企業では、

「せっかく育てた人材が辞めた」

という言葉をよく耳にします。

でもAI時代においては、この発想自体を見直す必要があるのではないでしょうか。

優秀な人材が会社を離れ、

起業する。 研究者になる。 別の産業をつくる。 そして数年後、再びパートナーや顧客としてつながる。

こうした人材ネットワークまで含めて考えれば、

企業は“人を囲い込む場所”ではなく、“人が成長するプラットフォーム”になる

という考え方もできます。

Huaweiは結果として、中国のフィジカルAI産業へ人材を送り出す一つの人材拠点になった、と中国のテックメディアから評価されています。Business Insider Japan

これは非常に興味深い現象です。


AI時代、採用で評価すべきものが変わる

もう一つ、私が重要だと感じたのが、

「何をもって優秀と判断するか」

です。

従来の採用では、

大学名。 会社名。 経験年数。 資格。 役職。

こうした過去の実績を見て判断するケースが多い。

もちろん、それらも重要です。

しかしAIによって知識取得や開発の速度が大きく変わる中で、今後はそれだけでは足りない。

私なら、むしろ次の4つを見ます。

① 学習速度

知らない領域に入ったとき、どれくらい早く理解し、成果まで持っていけるか。

② 問いを立てる力

AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「何を解くべきか」を定義する能力。

③ 実装力

研究・アイデアで終わらず、顧客価値やプロダクトまで持っていけるか。

④ レバレッジ

本人1人の成果ではなく、AI・チーム・仕組みを使って10人分、100人分の価値を生み出せるか。

私はこの4つが、AI時代の「Talent」の定義になると思っています。


「全員同じ初任給」は、本当に合理的なのか

ここには、日本企業にとって少し耳の痛い問題もあります。

突出した能力を持つ22歳と、 平均的な能力を持つ22歳を、

「同じ新卒だから」

という理由で、ほぼ同じ給与テーブルに入れる。

これは公平に見えます。

しかし、経営という観点では必ずしも合理的とは限りません。

もしAさんが年間1000万円の価値を生み出し、 Bさんが年間1億円の価値を生み出すのであれば、

給与が同じである方が、むしろ不自然です。

Huaweiの制度が示しているのは、

年齢ではなく、将来生み出す価値に価格をつける

という考え方です。

私は、日本企業も少しずつこの方向に進んでいくと考えています。

実際、日本でも霞が関キャピタルが、2027年春入社向けに初年度年収約1400万円の「トップタレント採用」を導入し、約1300人が応募したとBusiness Insider Japanは報じています。Business Insider Japan


ただし、「高年収採用」を真似するだけでは失敗する

ここは重要です。

Huaweiの記事を読んで、

「では日本企業も優秀な若者に2000万円払えばいい」

という話ではありません。

むしろ、それだけを真似するのは危険です。

高額報酬には、

優秀な上司。 難しい課題。 十分な計算資源。 研究・開発環境。 意思決定権。 失敗を許容する文化。

こうした環境がセットで必要です。

年収2000万円で採用しても、

毎日会議。 承認に1週間。 新しい提案は前例がないから却下。

これでは、トップ人材ほど早く辞めます。

つまり、

Talent Strategyの前に、Organization Strategyが必要

なのです。


中小企業こそ「Top Talent」を考えるべき

ここまで読むと、

「Huaweiだからできた」 「大企業の話だ」

と思うかもしれません。

私はむしろ逆だと考えています。

中小企業こそ、トップ人材への集中投資を考える価値があります。

1000人いる企業で1人優秀な人材が増える効果より、

100人の会社に1人突出した人材が入る効果の方が大きいからです。

特にAI時代は、一人のトップエンジニア、一人のPM、一人のAI人材が、

プロダクト。 営業。 採用。 育成。

まで大きく変える可能性があります。

だからこそ、

100人を10%強くする投資 と 1人の10倍人材を採る投資

の両方を持つ必要があると思っています。


SMHCでも考え始めています

私たちSMHCも、AI・IT・医療を展開する中で、人材戦略そのものを見直しています。

これまでの採用は、

「必要なポジションを埋める」

という考え方が中心でした。

しかしこれからは、

「5年後の会社をつくる人を、今採る」

という発想が必要だと考えています。

たとえば、

AIエンジニア。 FDE。 Agent Architect。 Cloud・Securityのトップ人材。 Technical Business Builder。

こうした人材については、通常採用とは別の評価軸、報酬、キャリア設計が必要でしょう。

私自身、今後はSMHCでも、

Top Talent / AI Talentという特別採用枠

を制度として検討していきたいと考えています。

ただし、単なる高年収制度にはしたくありません。

重要なのは、

「いくら払うか」ではなく、 「その人に何を任せ、何を生み出してもらうか」

だからです。


人材コストではなく、人材投資へ

経営会議では、人件費は「コスト」として表示されます。

でも、本当に優秀な人材は違います。

1000万円の人件費で、 5000万円の粗利を生み出す。

1人の技術者が、 新しいサービスを生み出す。

1人のリーダーが、 20人の能力を引き上げる。

そう考えると、人材は単なる固定費ではありません。

最もレバレッジの大きい投資対象の一つです。

Huaweiの「天才少年」の7年後を見て感じるのは、

彼らが4700万円だったことよりも、

Huaweiが7年前に、まだ完成していない才能へ賭けた

ということです。

経営者にとって難しいのは、

「完成した人材」を高く買うことではありません。

まだ市場が評価していない人を見つけ、

機会を与え、

成長させ、

未来の価値をつくること。

それこそが、本当の採用力なのではないでしょうか。


最後に、経営者の皆さんに一つ問いかけたいと思います。

もし22歳の候補者が、5年後に会社を10倍成長させる可能性を持っているとしたら、 あなたの会社はいくら投資できますか?

そして、もう一つ。

その人が入社したとき、本当に才能を開花させられる会社になっていますか?

私は後者の方が、はるかに重要な問いだと思っています。

この記事は2026年10月21日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする

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