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中国87%、米国32%。なぜAIへの「信頼」に55ポイントもの差が生まれたのか?

AI・DX 約8分で読めます

同じAIを見ているのに、なぜこれほど受け止め方が違うのか。

2025年、EdelmanがAIへの信頼を調査したところ、これほど大きな差が出ました。

同じAIを見ているはずなのに、なぜ55ポイントもの差が生まれるのでしょうか。

最近発表されたPew Research Center、Stanford HAI、Edelman、KPMG・University of Melbourneの調査を見ていくと、単なる「AIが好きか、嫌いか」では説明できない、興味深い違いが見えてきます。


米国では、若者のAIへの不安が急速に高まっている

まず、米国です。

Pew Research Centerが2026年6月に3,488人の米国成人を対象に行った調査では、18〜29歳で、「AIに対して、期待より不安のほうが大きい」

と答えた割合は、

2021年:31% ↓ 2026年:55% まで上昇しました。

反対に、

「不安より期待のほうが大きい」

という回答は、

25% → 11% まで低下しています。

さらに注目したいのが「仕事」です。

「今後20年間で、AIによって米国の仕事が減る」と考える18〜29歳は、

2024年:61% ↓ 2026年:73%

まで増えました。

これは若者だけではありません。

米国成人全体でも、

71%が「仕事は減る」 5%が「仕事は増える」

と回答しています。

つまり米国では、AIが社会に浸透する一方で、AIが雇用に与える影響への警戒も強まっている。

特に若い世代で、その変化が顕著になっています。


なぜ、若者ほど仕事を心配するのか

ここからは、このデータを見た私自身の考察です。

AIによって影響を受けやすい仕事を考えると、一つの問題が見えてきます。

文章作成、資料作成、基礎的なデザイン、情報収集、事務作業、データ分析。

こうした仕事の多くは、単なる「単純作業」ではありません。

これまで若手社員が社会に入り、仕事を覚え、経験を積むための「入口」でもありました。

経験豊富な社員にとってAIは、

「優秀なアシスタントが増えた」と感じられるかもしれません。

しかし、これから社会に出る若者からすれば、

「AIがその仕事をやるなら、自分はどこで経験を積めばいいのか?」

という問題になります。

私は、AI時代の経営において、この問題はかなり重要になると考えています。

AIによって若手の仕事を減らすことは、短期的には生産性向上になります。

しかし、若手が経験を積む仕事までなくしたとき、5年後の中堅社員をどう育てるのか。

これは企業側が考えなければならない、新しい人材育成の課題ではないでしょうか。


一方、中国ではまったく違う数字が出ている

Stanford Universityの「AI Index Report 2025」が紹介している国際調査では、

「AIを使った製品やサービスは、デメリットよりメリットのほうが大きい」

と考える人の割合は、中国:83% 米国:39%でした。

倍以上の差です。

そして、違いは「意識」だけではありません。

2026年のStanford AI Indexによると、2025年にAIを仕事で定期的、またはある程度定期的に利用している従業員は、世界全体では58%。

一方、中国を含む複数の国では、80%を超えています。

さらにKPMGとUniversity of Melbourneが47カ国・4万8,000人以上を対象に行った調査を見ると、中国では、

93%の従業員が仕事でAIを意図的に利用している

と回答しています。

AIは「いつか使う技術」ではなく、すでに仕事の中にかなり深く入っています。


しかし、中国人もAIを怖がっていないわけではない

ここが、今回いちばん興味深いところです。

「中国はAIに楽観的だから、リスクを気にしていない」

という単純な話ではありません。

KPMG・University of Melbourneの中国調査では、

67%がAIによるネガティブな結果を懸念。

51%がAIによるネガティブな結果を実際に経験、または目撃。

さらに、

70%が「AI生成コンテンツのため、オンライン情報を信頼できるか分からない」と回答。

86%は、AIによる偽情報への法整備や対策を求めています。

つまり、中国でもAIへの警戒感はかなり強い。

それでも同じ調査では、

68%がAIを信頼する意思がある。

92%がAI利用を受容・支持。

89%がAIによるさまざまなメリットを期待。

さらに、

78%が「AIツールを効果的に使える」と回答しています。

ここに、私は重要なヒントがあると思います。


「AIを信頼する」と「AIを警戒する」は、矛盾しない

AIに対する態度は、

「期待するか、不安になるか」

という二択ではないのかもしれません。

中国の調査を見ると、

AIのリスクを認識している。 それでも使う。 そして、使いこなす能力を身につけようとしている。

という姿が見えてきます。

これは企業のAI導入にも、そのまま当てはまると思います。

AIのリスクを無視して、とにかく使わせる。

これは危険です。

一方、「情報漏洩が怖い」「間違える可能性がある」「仕事を奪われるかもしれない」

という理由だけでAIを遠ざければ、組織としてのAI活用能力は育ちません。

必要なのは、

AI Literacy × AI Governance × AI Adoptionではないでしょうか。

使い方を学ぶ、リスクを理解する、ルールを作る。

その上で、実際の仕事で使う。

この循環を作れる企業と作れない企業で、数年後には大きな差が生まれる可能性があります。


中国87%、米国32%

そして、象徴的なのがEdelmanの調査です。

2025年秋、ブラジル、中国、ドイツ、英国、米国を対象に行われたAI調査では、

「AIを信頼する」

割合が、中国:87% ブラジル:67% ドイツ:39% 英国:36% 米国:32%

となりました。

中国と米国では、55ポイントの差。

ただ、Edelmanの調査でもう一つ興味深いのは、

AIについてポジティブな実体験を持つことと、AIへの信頼との関係です。

AIを実際に使い、学習や仕事、問題解決に役立つ経験をした人ほど、AIへの信頼が高い傾向が報告されています。

つまり、信頼しているから使う。 使って価値を実感するから、さらに信頼する。

そんな循環が存在する可能性があります。


これからの格差は「AIを持っているか」ではない

私は、今回の複数の調査を見て、最も重要なのはここだと思いました。

これからAIは、一部のテクノロジー企業だけが持つ特殊な技術ではなくなります。

ChatGPTをはじめ、同じようなAIツールを、多くの人が利用できる。

だとすれば、差が生まれるのは、

「AIを持っているか、持っていないか」ではありません。

「AIをどこまで使いこなせるか」です。

以前なら、一人ではできなかった仕事があります。

情報を集める、市場を調査する、データを分析する、アイデアを整理する、資料を作る、文章を書く。

AIによって、一人の人間が扱える「知的能力」の範囲は確実に広がっています。

そう考えると、これから人と人の差を生むものは、

「何人の部下を持っているか」ではなく、 「どれだけの知能を動かせるか」

になっていくのかもしれません。


経営者として、もう一つ考えたいこと

企業にとってAI導入の目的は、

「AIで何人減らせるか」

だけであってはいけないと思っています。

むしろ、「AIによって、一人ひとりの能力をどこまで拡張できるか」

を考えるべきではないでしょうか。

同時に、AIが若手の「入口の仕事」を代替するなら、

AI時代に若手をどう育てるのか。

これも経営課題になります。

AI導入、AI教育、AIガバナンス、そして、人材育成。

これらを別々に考えるのではなく、一つの経営システムとして設計する。

私は、それが「AIを導入した会社」と「AIを前提に再設計された会社」の違いになっていくと考えています。

AIを恐れるか、期待するか。その二択だけではありません。

リスクを理解しながら、どう使いこなすか。

これから問われるのは、そこなのではないでしょうか。

最後に、皆さんに聞いてみたいです。

今、より不安なのはどちらでしょうか。

「AIに自分の仕事を奪われること」ですか?

それとも、

「周囲がAIを使い始めているのに、自分だけが使いこなせていないこと」

でしょうか。

ぜひ、皆さんの考えを聞かせてください。


参考データ

Pew Research Center 「Young US adults are increasingly wary of AI, concerned it will take jobs」 2026年8月18日

Stanford Institute for Human-Centered AI 「AI Index Report 2025 / 2026 — Public Opinion」

Edelman 「2025 Edelman Trust Barometer Flash Poll: Trust and Artificial Intelligence at a Crossroads」

KPMG / University of Melbourne 「Trust, attitudes and use of artificial intelligence: A global study 2025」

※各調査は、調査対象・時期・質問文・「信頼」「利用」などの定義が異なります。本稿では異なる調査結果を同一指標として単純比較せず、それぞれが示すAIへの意識・利用・信頼の傾向をもとに考察しています。

この記事は2026年10月1日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする

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