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「なぜできない?」と聞く経営者、 「どうすればできる?」と聞く経営者。

経営 約6分で読めます

経営者になって気づいた。「口癖」は、会社の未来をつくっている。

最近、こんな言葉を目にしました。

「あなたの運は、あなたの言葉の中にある。」

少しスピリチュアルに聞こえるかもしれません。

「言葉のエネルギーで宇宙が動く」とまで言えば、私は科学的事実として受け取ることはできません。

でも、経営を続けていると、

「自分が日常的に使う言葉が、自分と組織の行動を変えていく」

ということは、かなり実感します。

これは、心理学の研究とも重なる部分があります。

米国心理学会(APA)は、ネガティブなセルフトークが、ネガティブな信念や態度を強化し、感情やモチベーションにも影響し得ると説明しています。

また、認知行動療法(CBT)の基本的な考え方の一つも、思考が感情に影響し、感情が行動に影響するというものです。

つまり、

言葉 → 思考 → 感情 → 行動

という連鎖は、単なる精神論として片づけるべきものではありません。

たとえば、問題が起きたとき。

「なぜ、こんなことになったんだ」

と言うのか。

それとも、

「ここから何を学べるだろう」

と言うのか。

起きた事実は同じです。

でも、その後の会議で出てくる言葉は変わります。

誰が悪かったのか。 なぜできなかったのか。

ではなく、

次はどうするのか。 何を変えるのか。 再発をどう防ぐのか。

へと、組織の思考が動き始めます。

これは経営でも同じです。

「人が足りない」 「景気が悪い」 「AIに仕事を奪われる」 「うちの会社には無理だ」

こうした言葉を経営者が毎日使っていたら、社員はどうなるでしょうか。

挑戦するより、「できない理由」を探す組織になってしまうかもしれません。

逆に、

「どうすればできる?」 「AIを使えば、どこまで変えられる?」 「この失敗から何を学ぶ?」 「次に試すことは何?」

という問いが日常になれば、組織が考える方向も変わっていく。

だから私は、

言葉は、単なるコミュニケーションではなく、組織を動かすOSの一部だ

と考えています。

ただし、「ポジティブ思考」だけでは危ない。

ここは経営者として、かなり重要だと思っています。

売上が落ちているのに、

「大丈夫。すべてうまくいく」

と言って数字を見なければ、それは前向きなのではなく、現実逃避です。

NYUのGabriele Oettingen教授らの研究でも、理想的な未来をポジティブに想像するだけでは十分ではなく、目標達成には「現実の障害」を認識し、具体的な行動につなげることの重要性が研究されています。

だから私が大切だと思うのは、

Optimism × Reality × Action

前向きな姿勢(ポジティブさ) × 現実の直視 × 即実行(アクション)

です。

未来には楽観的でいる。 現実の数字には厳しく向き合う。 そして、次の行動を決める。

この3つがセットになって初めて、言葉は力になる。

「自分ならできる」は、行動にも関係する。

心理学者Albert Banduraが提唱した「Self-Efficacy(自己効力感)」という考え方があります。

これは簡単に言えば、

「自分は、この行動を実行できる」

という自分自身の能力への信念です。

APAによれば、自己効力感は、目標設定、困難に直面したときの粘り強さ、ストレスへの対応など、幅広い行動との関連が研究されています。

そして自己効力感を形成する要因として、

・過去の成功体験 ・他者の成功を見ること ・周囲からの励ましや言葉 ・ストレスや感情の状態などが挙げられています。

つまり、リーダーが部下にかける言葉も、決して小さなものではありません。

失敗したとき、最初に何と言うか。

経営をしていると、失敗は必ずあります。

採用できなかった。 商談を失注した。 期待していたプロジェクトがうまくいかなかった。 優秀な人が会社を去った。

そんなとき、「最悪だった」で終わらせるのか。

それとも、

「この出来事は、会社に何を教えているのか?」

と問い直すのか。

この小さな違いが、1年、3年、10年と積み重なると、会社の文化そのものの差になっていくのではないでしょうか。

会社の文化は、立派なMVVだけでつくられるものではありません。

経営者が毎日どんな言葉を使うか。

管理職が部下にどんな問いを投げるか。

失敗した社員に最初に何と言うか。

そういう何気ない言葉の積み重ねが、組織文化になります。

AI時代になって、仕事の多くが自動化されても、

「何を問い、どう意味づけ、次にどう動くか」

を決めることは、人間に残る重要な役割だと思っています。

だからこそ私は、AI時代には「言葉の使い方」が、これまで以上に重要になると考えています。

最後に、自分自身への問いとして。

最近、自分は社員にどんな言葉を一番多く使っているだろうか?

「できない理由」を探す言葉なのか。

それとも、「では、どうすればできる?」

という言葉なのか。

経営者の口癖は、思っている以上に、会社の未来をつくっているのかもしれません。


参考データ・研究

1|American Psychological Association(APA)— Self-talk

APAはセルフトークを「自分自身に対して行う内的な対話」と定義し、ネガティブなセルフトークがネガティブな信念・態度を強化し、感情や反応にも影響し得ると説明しています。

APA Dictionary of Psychology — Self-talk

2|American Psychological Association — Healthy ways to handle life's stressors

APAは、CBT(認知行動療法)の考え方として、思考が感情に影響し、それが行動にも影響することを紹介し、ストレスに対する思考のリフレーミングを説明しています。

APA — Healthy ways to handle life's stressors

3|American Psychological Association — Self-Efficacy

Albert Banduraの自己効力感理論について、自己効力感と目標設定、困難への粘り強さ、ストレスへの対応などとの関係をAPAが解説しています。

APA — Self-efficacy: The theory at the heart of human agency

4|NYU Motivation Lab — Gabriele Oettingen

単純に「成功した未来」を想像するだけでなく、望む未来と現実の障害を対比させ、具体的な行動につなげる「Mental Contrasting」やWOOP(Wish・Outcome・Obstacle・Plan)に関する研究です。

NYU Motivation Lab — Gabriele Oettingen Publications

5|NYU Motivation Lab — Peter Gollwitzer

目標設定だけでなく、「いつ・どこで・どのように行動するか」を具体化するImplementation Intentions(実行意図)など、目標を実際の行動につなげる研究がまとめられています。

NYU Motivation Lab — Peter Gollwitzer Publications

※本稿における「言葉が運命を変える」という表現は比喩です。「宇宙のエネルギー」や「言葉そのものが幸運・不運を引き寄せる」という主張を科学的事実として扱っているものではありません。

#経営 #リーダーシップ #組織文化 #マネジメント #AI時代 #セルフトーク #自己効力感

この記事は2026年9月30日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする

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