李鉉道SMHC株式会社 代表取締役

目次
経営に「余白」はあるか。
週末なので、少しだけ経営について考えてみたいと思います。
平日は、売上、採用、顧客、AI、組織。
目の前の意思決定に追われていると、どうしても考えてしまいます。
「次に何が起きるのか?」
景気はどうなるのか。
金利はどこまで上がるのか。
為替はどう動くのか。
AI市場はどこまで成長するのか。
でも最近、私は少し違うことを考えるようになりました。
未来を正確に予測することより、予測が外れても耐えられる会社をつくる方が重要なのではないか。
言い換えると、
嵐を予測するより、船を強くする。
今日は週末なので、そんな視点から「経営の余白」について整理してみたいと思います。
世界を予測するより、自社を点検する
足元の経営環境を見ると、不確実性は決して小さくありません。
米国では9月、FRBが政策金利を0.25ポイント引き上げました。
日本銀行も9月18日に金融市場調節方針を変更しています。連邦準備制度理事会
一方、エネルギー価格も上昇しています。
米EIAによれば、2026年9月のブレント原油価格は平均1バレル114ドル。
8月から23ドル上昇し、一時は131ドルまで上がりました。
背景には、中東の石油インフラや輸送を巡る混乱があります。エネルギー情報管理局
食料価格も同じです。
FAOの食品価格指数は2026年9月に136.0となり、前月比1.5%、前年同月比5.8%上昇しました。
FAOは、輸送の混乱や天候要因が食料価格へ影響していると説明しています。FAOHome
もちろん、
「だから金融危機が来る」
と言いたいわけではありません。
未来は分かりません。
だからこそ重要なのは、
予測より、準備。
ではないでしょうか。
週末に見直したい4つのこと
経営にはたくさんのKPIがあります。
売上。利益。社員数。採用数。顧客数。プロジェクト数。
しかし、不確実性が高い時ほど、一度基本に戻る必要があると思っています。
1.現金は、何か月持つか
まず見るべきは、
会社にどれだけ時間が残されているか。
だと思います。
売上が想定より下振れした。
大型案件の開始が3か月遅れた。
重要顧客の予算が削減された。
そうなったときでも、
会社は何か月耐えられるのか。
現金があるということは、
単に安心できるという話ではありません。
意思決定を急がなくていい。
悪い条件の案件を断れる。
良い人材が現れた時に採用できる。
つまり、
現金とは「時間」と「選択肢」です。
2.売上ではなく、粗利を見ているか
会社を経営していると、どうしても売上に目が向きます。
売上10億、15億、20億。
数字が大きくなると、成長しているように見えます。
でも本当に重要なのは、
その売上から何が残ったのか。
です。
売上が増えても、低採算案件が増え、管理コストが増え、人員だけ増えているなら、
会社は必ずしも強くなっていません。
むしろ怖いのは、
売上成長が、経営課題を隠してしまうこと。
どの顧客が利益を生んでいるのか。
どの事業が価値を生んでいるのか。
どの案件から撤退するべきなのか。
売上ではなく、
粗利の質を見る。
これは、不確実な時代ほど重要になると思っています。
3.AI投資は「導入」で終わっていないか
これはIT企業を経営する立場として、特に考えているテーマです。
AI市場そのものは、これからも成長していくと思います。
でも、
AIが成長することと、すべてのAI投資が成功することは別です。
ChatGPTを契約した、AIツールを導入した、研修を実施した、AIプロジェクトを立ち上げた。それ自体は成果ではありません。
経営として見るべきなのは、
AIで何時間削減できたのか。
売上はいくら増えたのか。
粗利はいくら増えたのか。
意思決定は何日速くなったのか。
これからは、
「AIを使っている会社」と、
「AIを利益へ変えられる会社」
の差が大きくなっていくと考えています。
AI導入率より、
AI投資1円あたりの経営成果。
こちらを見る企業が強くなると思います。
4.会社に「余白」が残っているか
最後は数字ではありません。
私は最近、
余白も経営資源だ
と考えるようになりました。
人員を100%使う。資金を100%使う。スケジュールを100%埋める。経営者自身の時間も100%使う。
数字上は効率的に見えます。
でも、
予定外のことが起きた瞬間に動けなくなります。
大型案件が来た。
優秀な人材に出会った。
新しい技術が出た。
新しい市場が生まれた。
そんな時、
余力がゼロならチャンスを取れません。
だからこそ、
効率を最大化する経営から、選択肢を最大化する経営へ。
少しずつ考え方を変える必要があると思っています。
キャッシュを持つことは、「守り」なのか
「現金を持つ」
というと、守りの経営に聞こえるかもしれません。
私はそうは思いません。
景気が悪化した時、
良い会社を買えるかもしれない。
優秀な人材を採用できるかもしれない。
競合が投資を止めた時に、投資できるかもしれない。
新しい技術に挑戦できるかもしれない。
つまり、現金とは、
危機から逃げるための資金ではなく、次に攻めるための資金
でもあります。
守るためのキャッシュではない。
選択肢を残すためのキャッシュ。
私はその方が近いと思っています。
経営者自身にも「余白」が必要
そしてこれは、会社だけの話ではありません。
経営者自身も同じです。
予定を埋めれば埋めるほど、
目の前の問題には詳しくなります。
一方で、
会社がどこへ向かうべきかを考える時間は減っていきます。
今週の売上ではなく、
3年後どんな会社でありたいのか。
今いる顧客だけではなく、
どんな顧客から選ばれたいのか。
今いる社員だけではなく、
どんな仲間と未来をつくりたいのか。
AIを何個導入したかではなく、
AIによって会社そのものをどう変えたいのか。
こういう問いには、
会議と会議の間の30分では、なかなか向き合えません。
だから、週末くらいは、
経営者自身にも余白があっていい。
そう思います。
今週末、私自身も4つを確認します
現金は十分か。
粗利は本当に残っているか。
AI投資は成果につながっているか。
そして、会社と自分に余白があるか。
世界経済を正確に予測することはできません。
金利も、株価も、為替も、AI市場も、
来年どうなっているかは分かりません。
でも、ひとつだけできることがあります。
自分たちの船を、少しずつ強くすること。
キャッシュを残す。
粗利を見る。
投資の成果を確認する。
人と時間に余白をつくる。
嵐を予測できなくても、船を強くすることはできる。
週末は、
未来を予測する時間ではなく、
自分たちの船を点検する時間
にしてみてもいいのではないでしょうか。
皆さんは、週末に経営の何を見直していますか?
この記事は2026年10月11日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする
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