李鉉道SMHC株式会社 代表取締役

目次
私自身、これまで会社の成長を考えるとき、
「社員100人」
という数字を、一つの節目として意識してきました。
社員が増える。 売上が増える。 組織が大きくなる。
会社が成長していることを示す、非常に分かりやすい数字です。
でも最近、AIを経営に本格的に取り入れるほど、一つの疑問が強くなっています。
AI時代に、「社員数」を会社成長の重要KPIとして追い続けることは、本当に正しいのだろうか?
これは「採用をやめる」という話ではありません。
むしろ逆です。
これから採用する一人の価値が、以前よりはるかに大きくなる。
そう考え始めています。
「何人いるか」から「1人がどれだけ価値を生むか」へ
これまで多くの企業では、
売上を増やす ↓ 案件を増やす ↓ 人を採用する ↓ 組織を拡大する
という成長モデルが成立してきました。
もちろん、これからも人は必要です。
ただ、AIによってこの方程式の一部が変わり始めています。
Stanfordの「AI Index Report 2026」では、調査対象組織の88%が少なくとも一つの業務機能でAIを利用しているとされています。
一方で、AI活用による生産性向上は仕事によって大きく異なります。
つまり、
「AIを導入した=生産性が上がる」
ほど単純ではありません。
重要なのは、AIを持っているかではなく、
AIを前提に仕事と組織を再設計できているか。
私はここに経営の差が出ると考えています。
「何人減らせるか」ではなく、「1人を何倍にできるか」
AIの経営議論では、どうしても
「AIで何人削減できるのか?」
という話になりがちです。
私は少し違う見方をしています。
Headcount Reductionではなく、Human Capability Amplification。
10人を5人にすることだけを考えるのではなく、
10人が以前の20人、30人に相当する価値を生み出せないか。
エンジニア × AI。
営業 × AI。
採用 × AI。
管理 × AI。
そして、
経営 × AI。
AIによって一人ひとりの能力を増幅できれば、会社の成長と社員数の増加は、以前ほど比例しなくなるかもしれません。
だとすれば、経営KPIも変える必要がある
ここで、私自身の経営について考えました。
これまで、
社員数
は会社の規模を測る重要な数字でした。
これからも、採用計画、固定費、組織設計、マネジメント負荷を把握するうえで重要です。
だから社員数というKPIを捨てる必要はありません。
しかし、
「社員数が増えた=会社が強くなった」
とは限らなくなる。
そこで、AI時代には別の数字をもっと経営の中心に置くべきではないかと思っています。
例えば、
Revenue per Employee 1人当たり売上
Gross Profit per Employee 1人当たり粗利
Time to Decision 意思決定までの時間
Time to Production 意思決定から実装までの日数
AI Adoption Rate AIを実務で活用している割合
そして、
Learning Velocity 仮説→実装→顧客検証→改善を回す速度。
特に私は、
「1人当たり粗利」と「Learning Velocity」
を重要視しています。
採用人数を追う経営から、「1人当たり粗利」を追う経営へ
例えば、
社員数が50人から100人になった。
一見、大きな成長です。
しかし、
売上も2倍。 人件費も2倍。 管理コストも2倍。
そして粗利もほとんど変わらない。
これを本当に「強くなった」と呼べるでしょうか。
逆に、
社員数は50人から60人。
しかしAIと業務改革によって、
1人当たり売上が上がる。
1人当たり粗利が上がる。
開発期間が短くなる。
意思決定が速くなる。
顧客への提供価値が増える。
こちらの方が、
企業としての経営体質は強くなっている
と考えることもできます。
だから、
「今年何人採用したか」だけではなく、 「採用した一人が、AIとともにどれだけ価値を生み出せる環境を会社がつくったか」
まで経営側が責任を持つ。
そんな時代になるのではないでしょうか。
ただし、「少人数経営」が正解ではない
ここは誤解したくありません。
私は、
「AI時代は社員が少ない会社ほど優秀だ」
とは考えていません。
人が増えることで初めてできることもあります。
大規模プロジェクト。
顧客との長期的な関係。
専門性の蓄積。
品質保証。
セキュリティ。
医療などの規制対応。
次世代人材の育成。
組織として挑戦できる事業の幅。
これらは単純な「少人数化」では実現できません。
むしろ危険なのは、
AIによる効率化=人を減らすこと
だと経営者が考えてしまうことです。
AIによって生まれた余力を、
人員削減だけに使うのか。
それとも、
新規事業、顧客価値、研究開発、人材育成へ再投資するのか。
ここで企業の未来は大きく変わると思います。
SMHCも「社員数を増やす会社」だけを目指さない
これは私自身への問いでもあります。
SMHCもこれから成長していきます。
優秀なエンジニアも採用します。
組織も大きくします。
だから、
「100人を目指さない」
という話ではありません。
私が問い直しているのは、
100人になること自体を目的にしてはいけない
ということです。
100人になるなら、
100人でしか生み出せない価値をつくる。
そして、
10人でできる仕事を、100人でやる会社にはしない。
これが、AI時代の組織経営で非常に重要になると考えています。
SMHCが掲げるのは、
Human × AI。
AIを人の代替としてだけ見るのではなく、
人にしかできない価値を、AIによって増幅する。
そのために、AIをエンジニアだけのツールにせず、営業、採用、管理、経営まで会社全体へ広げていく。
目指したいのは、
Headcountを最大化する会社ではなく、Human Valueを最大化する会社です。
2030年、「会社の大きさ」は何で測られるのか?
今、企業紹介を見ると、
「社員○○名」
「売上○○億円」
「国内○拠点」
といった数字が並びます。
2030年には、そこへ別の数字が加わっているかもしれません。
1人当たり売上。
1人当たり粗利。
AI活用率。
意思決定から実装までの日数。
年間の仮説検証回数。
社員数は、これからも重要です。
しかし、
「何人いる会社なのか」ではなく、 「その人たちがAIと一緒に、どれだけの価値を生み出せる会社なのか」。
企業を見る物差しは、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
そして私自身も、
「社員100人を目指す」から、 「100人で、どれだけ大きな価値を生み出せる会社をつくるか」へ。
経営KPIそのものをアップデートしていきたいと思っています。
皆さんの会社では、「社員数」以外に組織の強さを何で測っていますか?
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この記事は2026年9月21日にLinkedInで公開したものです。LinkedInの元記事でコメントする
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